先日、発達障害のあるお子さんを育ててこられた、あるお母さんとお話をする機会がありました。
その中で印象的だったのは、「最近は子どもが親との予定をキャンセルして、自分の予定を優先することが増えてきた…」と笑いながら話されていたことです。
「ちょっと寂しいんですけどね」とおっしゃりつつも、どこかうれしそうにも見えました。
子どもが「親離れ」をし、自立に向かって歩み始めていることでもあったからでしょうか。
今回は、発達障害や知的障害のある子どもの自立について、親の気持ちや関わり方も含めて考えてみたいと思います。
手がかかった時期を経て
幼少期、特に発達障害や知的障害のある子どもは、生活面・学習面・対人関係などの場面で手がかかることが多いかと思います。
「この子には親のサポートが必要」と感じ、親がつきっきりでサポートしていたご家庭も多いのではないでしょうか。
発達障害などの特性により、学校生活での困難や友人関係のトラブル、癇癪(かんしゃく)などが起こる中で、発達障害の子育てのしんどさを感じた経験のある方も少なくないと思います。
「手のかかる子ども」であった分、心配なこともたくさんあったでしょうし、その分、愛情もたくさん注いでこられたのではないでしょうか。
子どもの気持ちは「自立」へと向かう
子どもが成長し、思春期を迎えると、少しずつ「親の言うことを聞かなくなる」「一人の時間を好む」といった変化が出てきます。
当たり前のことかもしれないですが、成長とともに子どもの気持ちも変わっていきます。
それは、発達障害のある子どもであっても、自分の意思や価値観を持ちはじめている証でもあるように思います。
中学・高校と進むにつれ、子どもは自分の世界を広げようとし、親に頼ることが少なくなっていきます。
ただ、親としては、このような変化に対して「自立に向かっている」と頭では理解していても、親離れが始まったことへの寂しさや不安を感じてしまうこともあります。
でもでも、こうした段階的な変化こそが、子どもの成長を促し、「自分の人生を生きていく」という自立への一歩にもつながるようにも思います。
自立の支えとなる「余暇」の存在
子どもの自立について、ちょっと視点を変えたお話です。
子どもが成長していく上で、生活や学習などのスキルや経験に限らず、「余暇」が重要な役割を果たすことをご存じでしょうか?
冒頭のお母さんは、「最近、子どもは休日に友達と趣味の集まりに出かけるのが何よりの楽しみみたいです」「いわるゆ推し活みたいですよ」とお話しされていました。
発達障害のある子どもにとっても、趣味や好きなことがあること、そしてそれを楽しめる時間(余暇)の充実は、自立を支える大きな要素です。
それは、お母さんの話から改めて強く感じました。
僕たちも、「仕事で疲れても、週末の趣味の時間が楽しみで頑張れる」ということは、よくあることかと思います。
心のバランスを保つ“支え”として余暇が重要な役割を果たしているんだと思います。
余暇の中にある「人とのつながり」
もう一つ大切なのは、余暇の中に“人とのつながり”があるということ。
これもまた、お母さんからの話で改めて感じました。
発達障害のある子どもは、対人関係に課題を抱えやすいことがありますが、子どもたちは誰かと楽しく話したいと思っていますし、友人との交流を求めてる子どもたちは多くいます。
同じ趣味を持つ仲間や安心できるグループの中でなら、より自然と交流が生まれやすいものです。
今回のお母さんの子どもも、共通の趣味を通じて仲良くなった友人が何人かでき、今ではその仲間との活動が心のよりどころになっているそうです。
余暇は、一人ひとりの楽しみとしてとても大切。でも、人とのつながりの中で余暇を過ごすことのほうがもっと大切。
お母さんの話を聞いて改めて思います。
親の役割も変わっていく
子どもの自立が進むにつれ、親の役割も「全面的な支援者」から「そっと見守る伴走者」へと変わっていくのではないでしょうか。
それは、「手を離す」のではなく、「見守りに徹し、心の距離を変えていく」こととも言えるかもしれません。
子どもが親以外の人と関わり、社会の中で自分の役割を見つけることは、成長の大きな一歩です。
その過程で親ができることは、「信じて見守る」ことと、「困ったときには戻って来られる安心感」を用意しておくことでしょうか。
まとめ:子離れとともに親も余暇を楽しんで!
子どもが自立していくとき、親が感じる寂しさは「今までのように必要とされなくなること」への不安かもしれません。
でも、それは、逆にいえば、「これまで親として十分に支えてきたからこそ、子どもが一歩を踏み出せた」という証でもあります。
それに、これを機に、親も親としての余暇や趣味を楽しみ、楽しむ姿を子どもにも知ってもらうことも大切なことなように思います。
子どもの自立に向けて、親もしっかり楽しんでいく!
冒頭のお母さんもそんなふうに楽しんでいるようです。

コメント