大人になるために準備すること:「自己選択と自己決定」を考える

子育て

子どもが成長し、大人になると、「自分で決める」ことはどんどん増えていきます。
朝ごはんに何を食べるか、どんな服を着るかといった小さなことから、学校や仕事、住む場所などの大きな決断まで、人生は選択と決定の連続でもあります。
でも、自閉症や知的障害のある子どもたちは、「自分で選ぶ」の経験が少ないと、いざ大人になったときに自分で決めることが難しくなってしまうことがあります。
「何がいいのかわからない」「選ぶのが不安」と感じ、周囲の人に頼りきりになったり、逆に適当に決めてしまったりすることもあります。
だからこそ、お子さんが小さいときから 「自己選択」と「自己決定」 に慣れていくことがとても大切です。
では、具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか?
ここでは5つのステップ をご紹介します。

① まずは、選択肢を用意する

「自己選択」といっても、最初から何でも自由に選べるわけではありません。
「何を選べばいいの?」と困ってしまうこともあるでしょう。
そこで 最初のステップは、家族や周囲の人が選択肢を用意することです。

たとえば…
「おやつは、クッキーとせんべい、どっちがいい?」
「今日は青いTシャツと白いTシャツ、どちらを着る?」
「公園とショッピングモール、どっちに行く?」

選択肢がいくつかあることで子どもも選びやすくなるかと思います。
また、ポイントは、子どもがどちらを選んでもOKな選択肢にすること。
例えば「公園に行くか、宿題をするか」だと、公園を選んだら宿題ができなくなりますが、「公園かショッピングモール」のように、どれを選んでも問題のない選択肢を準備するのがおすすめです。

② 選択肢の中から、本人が自ら選んで決めてみる

選択肢が用意できたら、子ども自身に選んでもらいます。
ここで大事なのは、「本当に子どもが自分で選んだか?」を意識することです。
たとえば、親が「こっちがいいんじゃない?」と先に言ってしまうと、子どもは「じゃあ、それでいいや」と流されてしまうかもしれません。
また、「こっちにしなさい」と指示してしまうと、それはもう「選択」ではなくなってしまいます。

子どもが自分で考えて選ぶ時間を、しっかり作ることが大切です。

③ 決めたことをやってみる


さて、選んだら、実際にそれをやってみます。

「クッキーを選んだからクッキーを食べる」

「公園を選んだから公園に行く」

「自分で選んだことが現実になる」経験を積むことが大切です。
ここで、もし子どもが「やっぱりこっちにすればよかった…」と言っても、「じゃあ、変えていいよ」と伝えるのも悪いことではないですが、「一度決めたことをやってみようね」と伝えるのも大事なポイントです。
もちろん、すぐに変えられるもの(おやつや服など)なら問題ありませんが、あまり何でも簡単に変えられると、「決めてもすぐにやめられる」と学習してしまうかもしれません。

ある程度のルールを決めて、決定したことに責任を持つ経験を積んでいけると理想に思います。

④ 選んで決めたことを一緒に振り返る

「やってみたらどうだった?」と、あとで一緒に振り返ることも大切です。

たとえば…
「クッキー、美味しかった?」
「今日は公園に行ったけど、楽しかった?」
「この服、着心地どうだった?」

振り返りをすることで、「自分で選んだことがどんな結果につながったのか」を確認できます。
もし「せんべいにすればよかった…」ということがあっても、「そうか〜、次はせんべいにしてみようね!」と前向きに捉えられるように声をかけるのもひとつです。

経験を積むことで、次の選択がよりスムーズになり、失敗を恐れずに決める力がついていくように思います。

⑤ 選択・決定・振り返りを繰り返していく

自己選択と自己決定の力は、1回や2回では身につかないかと思います。
最初は「どっちがいいのかわからない…」と迷うこともあるでしょうし、「こっちがいい!」と言いながら、すぐに後悔することもあるかもしれません。
でも、「自分で選んで決める → やってみる → 振り返る」 を繰り返していくうちに、だんだんと自信がつき、選ぶ力が育っていきます。
はじめは小さな選択から始めて、少しずつで良いのでステップアップしていけると良いかと思います。

間違った選択・決定も学びになる

時には、子どもが「間違った選択」をしてしまうこともあります。
でも、その経験こそが大切になったりします。
たとえば、「新しいお菓子を選んでみたけど、あまり好きじゃなかった」ということがあったら、
「あんまり好きじゃなかったね。でも、次は違うのを選べるね!」と声をかけてみるのもひとつです。
「失敗=悪いこと」ではなく、「学びのチャンス」 だと伝えることで、子どももいろんなことにチャレンジできるようになると思います。

自己選択・自己決定が自己実現につながる

自己選択・自己決定ができるようになると、子どもは「自分で決められる」ことに自信が持て、自分らしい人生を歩めるようになります。

「自分で選んで、自分で決めて、自分の人生を充実させていく」

これは、大人になるための大切な準備であり、大人としての生活を充実させるための土台にもなります。

家庭の中で、少しずつ「選ぶ」機会を増やし、子どもが安心して「自己決定できる力」を育んでいってもらえたらと思います。

社会福祉士。社会福祉法人で障害福祉の仕事をはじめて20年。現在も福祉の仕事をしていて、就労支援の講師実績は150件以上。本業で得た経験を活かして、家族にとってわかりやすい情報を発信したく、日々執筆中!

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