自閉症・発達障害のある子どもの「やる気」を引き出すには?親が知っておきたいモチベーションのヒント

子育て

子どもが習い事をすぐにやめてしまったり、勉強や部活動に集中できなかったりすることは、親にとっても気になる点ではないでしょうか。

「やる気がないのかな?」「根気が足りないのでは?」と心配になることもあるかと思います。

とくに、自閉症や発達障害のある子どもたちは、いわゆる「モチベーション(動機づけ)」の面で、少し異なる傾向を持っていることがあります。

本記事では、モチベーションとは何か、そして親ができる具体的な関わり方について、わかりやすくお伝えします。

モチベーションとは何か?

「モチベーション」とは、行動の原動力になる心のエネルギーのようなものです。心理学的には「動機づけ」とも呼ばれ、「なぜ行動するのか」という理由や目的にあたります。

そのなかでも近年注目されているのが「社会的動機仮説」。英語では、ソーシャルモチベーションセオリーと言ったりもするようです。

特に、自閉症の人で考えると、この社会的動機づけに対すること(反応)が弱く、社会的な認知の難しさなどもあって、社会や周りの状況を理解して行動することに難しさが現れるといわれています。

社会的動機づけとは?

社会的動機づけとは、まわりの人や社会からの働きかけによって、行動する意欲が高まることを指します。具体的には、以下のような心理が含まれます。

・周囲の期待に応えたい
・他人にほめられたい・認められたい
・○○をすると先生に好かれる
・○○をしないと評価が下がるかもしれない

こうした「他者からの視線や評価を気にして行動する」というのは、多くの人にとっては自然な感覚かもしれません。

しかし、自閉スペクトラム症(ASD)や発達障害のある子どもたちにとっては、この「社会的動機づけ」が弱い傾向にあることが研究などでも指摘されているようです。

自閉症の子どもが好むモチベーションのかたち

自閉症のある子どもたちは、以下のようなことに対して強い関心ややる気を示すことが多いです。

・自分の興味関心があること
・理屈が通っていて合理的なこと
・納得できる理由があること
・規則性やパターンがあること

たとえば、「○○をしたら、次に△△をする」といった一貫した流れや、スケジュールがはっきりしている活動には安心感を持ちやすく、モチベーションにもつながりやすくなります。

また、逆にいえば、「その場の空気を読む」「相手の気持ちを察する」「曖昧なルールに従う」といったことは苦手で、やる気が出にくい傾向があります。

ADHDの子どもが好むモチベーションのかたち

ADHD(注意欠如・多動症)の子どもたちは、自閉症とはまた違った動機づけの傾向があります。特に以下のような状況で意欲が湧きやすいです。

・すぐにご褒美がもらえる
・短期的で達成しやすい目標がある
・その場でフィードバックが得られる
・みんなの前で褒められる

ADHDの特性の一つに「遅延報酬が苦手」という点があります。これは、将来の大きな報酬よりも、今すぐ得られる小さなご褒美の方に強く反応しやすいという傾向です。

そのため、「努力していれば、いつか良いことがあるよ」という抽象的な目標ではなく、「これをしたら今日のおやつがひとつ増える」「お手伝いしたらご褒美がもらえる」といった具体的かつ即時的な報酬が有効です。

親ができる工夫と対応

■ 自閉症の子どもには…
・行動の「ルール」や「手順」を明確にして伝える
・どうなれば終わり(ゴール)となるかを伝える
・スケジュールや予定表などを使って「見通し」を伝える

自閉症の子どもたちは、安心できる流れや仕組み、見通しがもてる環境であることで力を発揮しやすくなります。

「何をするのか」「どうすればよいのか」「どうなれば終わりなのか」などが分かれば、意欲ややる気にもつながりやすくなります。

■ ADHDの子どもには…
・小さな目標に対して、こまめに「ほめる」
・達成できたらその都度「ご褒美」を設定する(些細なことでOK)
・みんなの前や本人が意識する人の前で、できたことを評価する

ADHDの子どもたちは、注目されることや、テンポのよい成功体験がモチベーション維持に直結します。日々の中で「できたね!」「すごいね!」とリアルタイムで声をかけることが、何よりのエネルギー源になります。

まとめ

子どものやる気や意欲が見えにくいと感じたとき、「どうしてやる気がないのだろう」と悩むよりも、「この子に合ったモチベーションのかたちは何だろう?」と考えてみることが大切かと思います。

自閉症の子どもには「わかりやすく、見通しがあること」が、ADHDの子どもには「すぐにフィードバックがあること」や「楽しい刺激」が、やる気につながりやすい傾向があります。

参考にしてもらえたら嬉しいです。

ふくしる(匿名)

社会福祉士。社会福祉法人で障害福祉に携わって20年。現在も福祉の仕事をしていて、就労支援の講師実績は150件以上。本業で得た経験を活かして、家族にとってわかりやすい情報を発信したく、日々執筆中!

ふくしる(匿名)をフォローする
子育て
ふくしる(匿名)をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました