障害のある人が働くための支援(福祉サービス)について

福祉サービス

家族として、子どもが大人になると「どんなふうに働くか」は気になるところです。
でも、「働き方は多様」でもあります。
障害の種類や特性も多様であれば、働き方はより一層、多様であって良いと思います。

ここでは、障害のある人の「働く」について、主には働くために受けることができる就労支援(福祉サービス)について解説をしていきます。

障害のある人の進路

まずは、特別支援学校の卒業生の進路からです。

特別支援学校卒の進路
・一般企業への就職は約30.2%
・就労系福祉サービスの利用は約33.0%
*引⽤:第38回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料(厚⽣労働省)

上記のとおり、就職、もしくは就職のための訓練をする就労系福祉サービスの利用者は、全体の半分以上となっています。

ちなみに、就労系福祉サービスとは、以下にある3つを言います。

①就労移行支援事業所
②就労継続支援B型
③就労継続支援A型

特別支援学校を卒業する人で考えてみると、特に多いのは、「就労継続支援B型」、次に「就労移行支援」の順でしょうか。
一般企業での就職を「ひとまずは目指さない」ということなら、B型かA型を進路選択する場合が多いように思います。

また、それ以外の進路としては、

④生活介護
⑤地域活動支援センター
⑥自立訓練

などがあります。

④の生活介護は、障害支援区分の3以上が対象ということもあり、障害の程度が重かったり、十分なサポートが必要な方が利用者の多くを占めています。
⑤地域活動支援センターは「ちかつ」と略称される場所で、デイサービスのような緩やかな活動が中心です。
⑥の自立訓練は、社会人生活や自立に向けて必要となる日常生活に関する訓練(生活訓練)などが主な活動となります。

また、事業所によっては④や⑤でも「働くこと」を支援している場合もあります。作業活動をしたり、場合によっては就職のことも相談にのってくれる場合もあるようです。

今回のテーマ「働く」の進路先としては、①〜③の就労系福祉サービスが選択肢の中心となるように思います。

就労系福祉サービスについて(比較)

3つある就労系福祉サービスについて、主なポイントを比較して見ていきます。

就労移行支援就労継続支援A型就労継続支援B型
対象者就職を目指す人支援ありで働きたい人作業所で働きたい人
利用期限2年間期限なし期限なし
サービス内容職業訓練、企業実習、就活支援、(定着支援)PC、軽作業、清掃など(事業所による)パンやお菓子作り、内職、清掃など
工賃工賃なしが多い全国平均:83,551円/月(令和4年度)全国平均:17,031円/月(令和4年度)

進路先の選び方

進路先の選び方としては、まずは子どもにとっての「将来の働き方」を考える必要があります。

・何歳までに働きたいか?
・どんな仕事なら働けそうか?
・支援者から、どんなサポートがどれくらい必要か?

早く働きたい場合は、就労移行支援を選ぶことで良いかと思います。就活支援や面接同行などをしてくれる事業所も多いですし、「就労定着支援」を併設して3年半の職場定着を支援してくれる事業所もあります。

「就職は焦らずゆっくり目指してほしい」という場合は、B型やA型、自立訓練などを選ぶことでも良いかと思います。
最近は、自立訓練の事業所も微増しているようです。就労系福祉サービスを利用前に自立訓練(有期限の2年サービス)を使うプランもありかと思います。
また、「仲間とともにゆっくり働いて欲しい」「お給料はそんなに多くなくても大丈夫」という場合は、B型が適しているように思います。

A型事業所については、「今すぐ働いて欲しい」「少しでも収入を得てほしい」という人に適している福祉サービスです。
福祉ではありますが、最低賃金以上の時給が設定されていて、雇用保険の加入も場合によっては可能なので、ある程度の収入を期待することができますし、退職後の失業保険の給付も可能となります。

働き方を考える上では、子ども本人のニーズや気持ちに加えて、親の願いも踏まえた上での進路先の検討が大切になるかと思います。

子どもの「働く」は中長期視点で考える

社会人の一般的な定年は、60歳や65歳と考えると、障害のある子どもの働くについても、どちらかと言うと中長期で考えた方が良さそうです。
親の気持ちとしては、「早く定職についてほしい」「安定を望みたい」「親として安心感を得たい」などの気持ちが先行するかと思いますが、親目線ではなく子どもの将来を考えた進路先や支援内容を考えていく必要があるかと思います。

私は普段の仕事を通して、特別支援学校の生徒さんや高校生、大学生の相談を受けることが多くあります。ご家族の相談事としては、就職に向けた進め方や進路先の選び方が話題になることは多く、一般的に18歳の人たちが進学で大学生活を送ることを考えると、「18歳で就職を目指さなくてもよいのでは?」とお伝えするようにしています。

・働くについては焦らず考えていく
・早く働くより、長く働くが大事
・18歳で働かなくても、大卒の22歳以降で「働く」を考えても大丈夫
・働く前に必要な「経験」が得られる福祉サービスも大切である
・退職や転職、働く場所の変更などにも、「柔軟に対応できる体制」も考えておく

知的障害や発達障害の人にとって、「経験から学ぶ」は得意とする強みの1つです。働く前にどんな経験が必要か、どんな経験が本人の将来のためになるかなど、「働く前の必要な経験」は進路先を考える上での大切な視点となります。

また、仮に就職して安定的に働けていたとしても、会社の状況や社会情勢など、退職や転職の可能性は少なくないかと思います。そうなると、職場を変えたり働き方を変えるなどの変更にも対応できるような視点も必要で、変化への対応を一緒に考えてくれる身近な支援者の存在も、進路先の検討としては大切な視点かと思います。

子どもの「働く」を中長期の視点で考えるとなると予測できないことは多くなりますが、焦らず、子どものペースも大切にして、将来のことを考えていってもらえたらと思います。

まとめ

・特別支援学校卒の人で、約30%は就職、約30%は就労系福祉サービスを利用する
・障害のある人の進路は、就職や進学以外に「就労系福祉サービス」がある
・進路は、まずは子どもにとっての「将来の働き方」を考える必要がある
・中長期的な視点で子どもの「働く」と「将来」を考えることが大切

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