知的障害の子どもを育てる親が知っておきたいこと

子育て

子どもに知的障害があると診断されたとき、親としてどのように向き合えば良いのか、多くの不安や心配が生まれることと思います。

「子どもの将来はどうなるのだろう」
「学校選び、就職先はどうすればいいか」
「適切な支援を受けるにはどうすればいいのか」

など、頭の中には次々と考えるべきことが浮かび、ネガティブなことも考えてしまうかもしれません。

この記事では、知的障害のある子どもを育てるうえで、親として知っておきたい基本的なポイントや心構えについてまとめておきたいと思います。

子どもの特性を理解する

まず大切なのは、子ども一人ひとりが持つ特性を正しく理解することです。知的障害と一口に言っても、その程度や特性はさまざまかと思います。

知的障害とは
一般的には、心身の発達期(概ね18歳まで)に現れた、生活上の適応障害を伴う知的機能障害をいいます。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます(知能指数が70以下の場合には知的障害とみなされる)。また、認知機能(理解・判断・思考・記憶・知覚)に障害があり、適切な配慮と支援が必要な状態をいうとされています。

ちなみに、認知機能とは、簡単に言うと、さまざまなことを理解したり、考えて判断したり、記憶したりする脳の働きのことをいいます。知的障害の人は、この認知機能に遅れや低さが見られ、生活面における支援が必要であったり、周囲環境に適応しづらくなる様子が現れたりします。

そのような知的障害の特性から、以下の点を意識すると良いかと思います。

  • 成長のペースは一人ひとり違う
    知的障害のある子どもは、学習や日常生活のスキルを身につけるのに通常より時間がかかることがあります。焦らず、子どものペースに寄り添うことが大切です。
  • 「やればできる!」ではない視点
    「やればできるよ!」の関わりではうまくいかないこともあり、知的障害は知的機能の遅れと低さがあるため、ゆっくり成長することもあれば、他の人と同じだけできるようになるとは限らないこともあります。できないことではなく、「できることに着目」をしてもらえたらと思います。
  • 得意なことを見つける
    たとえば、絵を描くのが好きだったり、音楽に興味を持ったりする場合があります。得意なことを見つけ、それを伸ばしてあげることが子どもの自己肯定感につながります。

子どもの特性を把握するために、主治医や専門家、心理士に相談したり、発達検査を受けたりすることも有効です。また、保育士や教師、療育センターの職員など、日々子どもと関わる人たちからの視点も大切な情報源です。

適切な支援を受けるための準備

知的障害のある子どもが適切な支援を受けるためには、さまざまな制度やサービスがあります。

支援制度やサービスの例

  • 児童発達支援
    児童発達支援センターや児童デイサービスセンターでは、障害特性に応じた日常生活スキルやコミュニケーション能力を育むプログラムが提供されています。
  • 特別支援教育
    特別支援学校では知的障害のある子ども向けに設計されたカリキュラムがあり、通常学級内で支援を受けられる通級指導教室、学校内に設置された特別支援学級など、障害のある子どもの教育環境にはいくつかの選択肢があります。
  • 障害福祉サービス
    障害者手帳を取得することで、医療費の助成や福祉サービスの利用が可能になります。先ほどの児童デイサービスも福祉サービスです。ただ、詳細は自治体によって内容が若干異なることもあるため、お住まいの地域の障害福祉の窓口で確認していただけたらと思います。

早めに支援を受けることで、子どもの成長を助けるだけでなく、家族にもとっても安心感につながり、家族全体の生活がよりスムーズになることもあるかと思います。

子どもの未来を長期的に考える

子どもの成長とともに、進学、就労、成人後の生活といった将来についても考える必要が出てきます。早い段階から情報を集め、準備を進めておくことが重要です。

  • 進学の選択肢
    特別支援学校や職業訓練校など、子どもの特性に合った進路を選びましょう。近年は、知的障害があっても勉強をがんばりたいお子さんが大学進学を目指すケースもあります。大学等の高等教育機関は専門的な勉強や研究に努める場所ですが、「教育機関における合理的配慮」が学校内に浸透してきたこともあり、進学もひとつの選択肢です。
  • 就労支援
    障害者雇用を積極的に行う企業や、就労移行支援事業所などの利用を検討してみてください。これも近年の障害者雇用促進の改正によって企業に義務付ける法定雇用率が2.5%→2.7%と引き上げされていることもあり、理解ある企業、雇用に積極的な企業、企業内に心理士等の専門職を配置する企業など、働く職場環境もより良くなっています。
  • 医療との連携(長い付き合い)
    子どもが成人後も適切な支援が受けれるよう、医療機関との長い連携は大切な視点です。今はなにもない、落ち着いているなどであっても、「医療と長く付き合う」は将来の生活を安定化させてくれます。長い人生のなかで体調や精神的な調子に波は必ずあるはずです。そんなとき、昔から診てくれている主治医がいれば、過去から今を診てくれて、未来を一緒に考えてくれます。長く付き合ってくれるドクターを探しておくことも大切かと思います。

最後に

知的障害のある子どもを育てる上で、この先も様々なことがあるかと思います。苦労されることも多いかもしれませんが、子どもとの日々の生活には、きっと多くの喜びや発見があるはずです。
ゆっくりと成長する知的障害の子どもだからこそ、得られるものもたくさんあると思います。


親が適切な情報を得て、周囲と連携しながら子どもの成長を支えることで、子どもは自分らしい未来を築くことができると思います。

このブログも、そんな適切な情報源のひとつとなれるよう、引き続き発信をがんばっていきます。

社会福祉士。社会福祉法人で障害福祉の仕事をはじめて20年。現在も福祉の仕事をしていて、就労支援の講師実績は150件以上。本業で得た経験を活かして、家族にとってわかりやすい情報を発信したく、日々執筆中!

ふくしる(匿名)をフォローする
子育て
ふくしる(匿名)をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました