発達障害や知的障害の子どもをもつご家族にとって、どんな習い事や趣味を持たせたら良いのか、悩むことは多いかと思います。
「何を選んだらいいのか分からない」
「他の子と同じように通わせることが難しいのではないか」
「子どもが楽しめるか不安」
といった声をよく耳にします。しかし、習い事や趣味は、ただの時間つぶしではなく、子どもの成長や自己肯定感を高める大切な役割を果たします。それに、趣味や好きなことがあり、それらが充実している子どもは、大人になってから、社会人になってからも仕事と生活のうまく成り立たすことができ、生活の質(QOL)は向上します。
この記事では、発達障害の子どもに適した習い事や趣味を選ぶためのポイントや具体的な例をご紹介します。ご家族が安心して選べるようなヒントをお届けできればと思います。
1. なぜ習い事や趣味が大切なのか?
習い事や趣味には、子どもにとって次のようなメリットがあります。
- 新しいスキルや知識を学べる
子どもは新しいことに挑戦する中で、自分の得意なことや好きなことを見つけることができます。また、場合によっては、苦手なことを克服する経験も得られます。 - 自己肯定感が育つ
「やり遂げた!」「できた!」という成功体験は、子どもの自己肯定感を高めます。たとえ小さな成功でも、子どもにとっては大きな成長の一歩です。 - 社会性が育まれる
他の子どもや大人と関わる中で、コミュニケーション能力や協調性が育まれていきます。もちろん、発達障害や知的障害の障害特性も影響して、苦手への克服が期待できるわけではないですが、子どもそれぞれのゆっくりとした成長に良い影響を与えることは確かです。 - リフレッシュやストレス解消
自分が好きなことに集中する時間は、ストレスの発散や気持ちの安定につながります。情緒の安定は、学校生活や大人になってからの生活にも良い影響を与え、QOLの向上にも繋がっていきます。
これらのメリットは、どの子どもにも共通するものですが、発達障害や知的障害のある子どもには特に有効かと思います。ポイントは、無理をさせないことと、子どものペースに合わせて楽しむこと、好きなことや興味関心を少しずつ見つけていくことが大切です。
2. 習い事や趣味を選ぶときの基本の考え方
子どもの興味や特性を理解する
習い事を選ぶ際に最も大切なのは、子どもの興味関心や障害特性に合ったものを選ぶことです。例えば、以下のような視点を持つと良いでしょう。
- 子どもが普段好きな遊びや活動は何か?
絵を描くのが好き、音楽を聴くのが好き、体を動かすのが好きなどなど、子どもの好きなことをよく観察し、それをベースに選ぶことがおすすめです。 - 子どもの得意なこと、苦手なことは何か?
例えば、細かい作業が得意な子どもには手芸や模型作りが向いているかもしれないです。一方で、体力が余っている子どもにはスポーツ系の習い事が合うように思います。 - 感覚の特性を考慮する
発達障害のある子どもの中には、感覚が敏感だったり、鈍感だったりする場合があります。たとえば、大きな音が苦手な子どもにピアノを勧めるのはあまり適していないでしょう。一方で、触覚が敏感な子どもには粘土や水を使った活動が楽しいと感じられることがあります。
スタッフの配慮があるかを確認する
発達障害のある子どもにとって、習い事の環境やそこで教えてくれるスタッフの理解はとても重要です。選ぶ際には以下の点を確認してみてください。
- 子どもの特性について相談しやすい雰囲気か
- 無理のないペースで進めてくれるか
- みんなと一緒ではなく、個別的な対応をしてくれるか
特に、子どもが慣れる最初についてはサポートしてくれるスタッフが近くにいる場所を選ぶと安心です。
3. 発達障害の子どもにおすすめの習い事や趣味
以下は、発達障害の特性を持つ子どもに適していると言われる習い事や趣味の具体例です。
1. アート系
- 絵画教室や工作教室
これらは、自分のペースで取り組むことができます。また、完成した作品が目に見える形で残るので、達成感も得られます。絵画等のアート活動は昔も今も注目されていて、最近は、アーティストと社会を繋ぐ企業の取り組みも出てきました。趣味がこういった形になる可能性も秘めているように思います。https://www.heralbony.jp/ - 陶芸や粘土遊び
手を動かすことで感覚が刺激され、リラックス効果も期待できます。また、陶芸は完成したもの普段の生活で使用することもできるため、達成感も得られやすいです。
2. 音楽系
- ピアノやドラム
音楽はリズム感や集中力を養います。特にドラムは体を動かす要素もあるため、エネルギー発散に適しています。実際、僕の知り合いもドラムをやっていて、バンドを組んで活動をされています。 - 歌やダンス
歌やダンスは、体を動かす活動を通じて、感情を表現する方法を学べます。知的障害やダウン症の子どもたちが地域のダンス教室に混じって楽しんでいる例は、よくお聞きします。 - 太鼓
ダンス同様に、太鼓も体を動かして楽しむことができ、知的障害の人が参加する事例もよく聞きます。社会福祉法人南高愛隣会がサポートする「瑞宝太鼓」もそんな事例のひとつです。https://www.zuiho-taiko.com/
3. スポーツ系
- スイミング
全身運動で体力をつけながら、水の中でリラックスできる子どもも多いです。 - 体操
リズム感を身につけたり、身体を動かす楽しさを知ることができます。集団が苦手な場合は、個別レッスンを選ぶと良いでしょう。 - スペシャルオリンピックス
スペシャルオリンピックス(英語: Special Olympics、略称:SO)とは、知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織です。習い事でのスポーツの先に、こういった活躍も場合によっては期待できるかもしれないです。https://www.son.or.jp
4. その他のおすすめ
- プログラミング教室
パソコンを使った作業が得意な子供に向いています。論理的な思考力や問題解決能力を育てます。 - ロボット
ロボットを作り、自分なりに動かす教室もあるようです。自分で考え、自分なりにロボットを動かし、試行錯誤する。こういった流れは、特性にも合いやすいように思います。阪急阪神では、このような取り組みがあるようです。https://www.proglab.education/ - ボードゲームやカードゲーム
頭を使うゲームは、集中力やコミュニケーション力を鍛えます。 - 料理
食べることが好き、作るのが好き、振る舞うのが好きなど、料理を楽しむ発達障害や知的障害の子どもたちは、僕の周りにもたくさんおられます。学校や放課後デイサービス、大人になってからの活動においても、料理は身近な存在です。地域の料理教室に行く発達障害の方もおられますし、料理はレシピがあり、進め方が明確で、完成後に食事ができるのも、楽しめる大きなポイントです。
4. まとめ
発達障害の子どもに適した習い事や趣味を選ぶ際には、子どもの興味興味や特性に合わせることがとても大切です。そして、何よりも、楽しむことを第一に、無理のない範囲で続けていくことが子どもにとっても充実したものになるかと思います。
また、以下は、このサイトでも何度も紹介させてもらっている本田先生が理事長をしておられるNPO法人ネスト・ジャパンの事例です。発達障害の人たちが、好きで繋がり、余暇や外出を楽しんでおられます。こういった姿が大人になっても地域で実現できていると、お子さんの将来も充実するように思います。https://www.nest-japan.org/
趣味や習い後の先には、「余暇の充実」「私生活の充実」があり、その先には「QOL(生活の質)の向上」につながっていきます。お子さんの将来や親なきあとの充実のためにも、少しずつ、「好きなこと探し」を続けてもらえたらと思います。
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