【おすすめ図書】「子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと」(本田秀夫先生)

おすすめ図書

「宿題は百害あって一利なし」。そう断言する本田先生。
本書では、宿題や勉強よりも大事なことがあると、本書では多くの事例を交えて解説がされています。

僕は、本田先生と直接ご挨拶をしたことはないものの、対面やオンライン等で何度もご講演を聞かせてもらいました。
お話は分かりやすいし、エビデンスも分かりやすく解説くださるし、独自の川柳で子育てのポイントをユーモア交えて教えてくださるのも、聞き応えがあります。
NHKのプロフェッショナル、ハートネットTV、NHKハートフォーラムなどにも出演されていて、発達障害支援、児童精神科などの分野で超有名人です。

そんな本田先生の著書はたくさんありますが、ここでは、イチオシである本書について主なポイントをご紹介したいと思います。

発達障害の有無に関係なく、発達障害の疑いがあるようないわるゆグレーと言われる子どもも含めて、全ての子どもと家族にとって参考になる本書です。

子どもが主役

「主役」は本書で何度も登場します。親や家族が「平均的」「常識的」に育てていこうとしていないか…。
本書は、この考え方を改めることから子育てが始まると書かれていました。

当たり前なことですが、「主役は子ども」です。
子どもの特性や興味関心、学び方や成長の仕方を観察する中で、子どもに合わせる中で子育てを行なっていく。そのための具体的な方法が本書には多くの事例とともに解説されています。

「子どもが主役」。
この考え方をベースに書かれているだけで、子育てをするご家族にとっては意味のある書籍であると思います。

子育てを考えるクイズ(事例)

発達障害は、色んな特性のある人の総称でもあり、主な診断名では、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などがあります。

つまり、発達障害にはいろんなタイプのお子さんがいるということでもあります。
子育てをする上では、答えが一つではないこともあり、診断名の違いで子育てに違いが出ることもあり、本書では8つの事例をクイズ形式で子育てへのヒントを紹介されています。

「Q 6  着替えるのが苦手な子にどう対応する?  手先が不器用で、着替えるのが苦手な子がいます。自分で着替えると朝の支度に時間がかかってしまうので、いつも親に手伝ってもらっています。しかし、苦手だからといって、いつまでも手助けしてもらっていて、よいのでしょうか。  みなさんだったら、どんな見通しをもって対応しますか?

A 1「何歳になったら自分でやらせる」と決めて、それまでは手伝う
A 2本人が「自分でやる」と言うまでは、何歳になっても手伝う
A 3いろいろなパターンで本人にやらせてみて、助けを求められたら手伝う」(本書より)

いかがでしょうか?
皆さんにとっての答えはどれでしょうか?

自分の子育てをイメージし、その上でクイズを考えてみると、子育てへの考え方が変わったり、気持ちが楽になることもあるように思います。
クイズを読むだけでも、本田先生の良さをたくさん感じれるはずです。

「勉強を教えてるなんて、100年早い!」

「勉強は、何歳になってもできます。大人になって仕事についてから業務に興味をもち、自主的に勉強して大成する人もいます。本当に学びたいと思うことがあれば、学習する習慣を身につけることは、いつでもできるのです。勉強は、身のまわりのことをあとまわしにしてまで、教えるようなことではありません。(本書より)」

本書で伝えたい先生の考えは、この言葉に詰まっているように思います。
勉強より大事なことは「身のまわりのこと」。
つまりは、「生活力」です。

・身だしなみ
・食事
・家事の手伝い
・片付け
・忘れ物
・睡眠 などなど

日常生活を送る上での必要なことは、挙げればキリがないように思います。
これらは、日常生活スキル、ライフスキルとも表現したりしますが、いわゆる「生活スキル」です。

僕も、3人の子どもがいますが、身のまわりのことはついつい親のほうで手助けしてしまい、その分といってはなんですが、勉強や習い事を頑張るように声がけをしてしまっています。

「100年早い!」と言う本田先生には、生活スキルが何よりも優先とのメッセージも含まれているように思います。

・親は手助けを控える
・子どものできそうなことを後押しする
・やり方を変えることで難易度を調整する
・「平均」「常識」に囚われず発想や環境を変えて教えてみる
・「できる」「できない」で考えず、少しずつでも体験させる

日常生活や学校生活などにおける「生活スキル」は、子ども一人ひとりにとって必要なスキルは様々です。

ただ、親がいつまでも手助けしていては子どもの成長や大人になってからの生活は考えにくいように思います。
子どものうちから、できることから少しずつ。
それが将来に繋がっていくため、何から教えるか、どうやって教えるかは、本書を参考にしてもらえたらと思います。

「自律スキル」と「ソーシャルスキル」

自律とは、自分を律すること、すなわち自分にできること、やりたいことをやることです。「自律スキル」は、先ほどの教えでいうと「人と違うことをやるべし!」に関連します。

「ソーシャルスキル」は「社会のルールはちゃんと守るべし!」に関わります。人に合わせられないことがあってもいいけれど、最低限のルールは守る。一人でルールを守るのが難しければ、誰かに相談してサポートしてもらう。人に相談することも含めた、社会参加のスキルです。(本書より)

僕も、本田先生ほどの実績はないですが、福祉の仕事を始めて20年になり、自閉症や発達障害、知的障害のある人とたくさん関わってきました。
「自律スキル」と「ソーシャルスキル」は、引用にあるように、とても大切なスキルですし、このスキルがあることで生活の質(QOL)はより良くなることに繋がると、現場感覚としてそう思います。

ただ、2つのスキルをご家族が子育ての中で意識して子どもと関わっていくのは難しい。
それもまた、そう思います。

でも、子育ての目指す先はこの2つのスキルを身につけていくことにあります。
大人になる前に、大人になってからの将来を見据えて、大事となる2つのスキルをどのように教えていけばよいかは、ぜひ、本書を読む中でヒントを得てもらえたらと思います。

「子どもが主役」とした上で構成された本書。
お子さんのペースで、焦らず、少しずつ子育てを進めていくことの必要性を優しく伝えてくれるのもこの本の良さです。

僕が書いたわけでもないですし、僕が言うまでもないですが、ぜひ、多くの人に読んでもらえたらうれしいなぁって思います。

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